ダイヤトーンのサブウーファーSW-G50を聴いた

ダイヤトーンのサブウーファー、SW-G50(84,000円)が、発売前から大評判を呼んでいる。この魅力を解剖。

ダイヤトーンSW-G50は、25センチ口径のサブウーファー。振動板には、2011年春発売の16センチ・セパレート2ウェイ・システム、DS-G50と同じ、カーボンナノチューブ配合のNCV振動板を採用。この軽量な振動板と、超強力な磁気回路を組み合わせることで、反応の良い低音を再生するのが特徴だ。
カーボンナノチューブ配合のNCV振動板を採用
21センチのマグネットは特注
なにしろ、SW-G50に使われるフェライトマグネットは、特注品の21センチという大口径。磁束密度は17,000ガウスにも達する。その強力な低歪磁気回路で、振動板とボイスコイルを合わせても78グラム程度の軽い駆動系パーツを動かすわけだから、レスポンスがいいのも当然といえば当然だ。

しかも、このサブウーファー、あまりスピーカーボックス(エンクロージャー)の大きさに左右されず、安定した性能を発揮してくれるのも特徴だ。最小では空気容量にして10リットルもあれば大丈夫。磁気回路を含む、スピーカーの背面の容積が約2.5リットルほどあるから、13〜14リットル程度のスピーカーボックスがあれば、レスポンスのいい低音を再生してくれるし、それ以上に大きい箱でも特性の変化はないという。これは、ある意味凄いことだ。

ここで、スピーカーの基本的な話をしておくと、スピーカーは磁気回路に電気を流すことでボイスコイルが押す〜引くの動きを繰り返し、振動板を動かして音を発する。この時、いかに正確な音を再生できるかは、音楽信号に忠実に押すから引くの動きに移行する、つまり振動板をしっかりと止めることが重要だ。

この、振動板を止める作業に重要な役割を果たすのがスピーカーボックス内の空気や振動板の重量だったりする。振動板の動きを収まりやすくするために振動板をある程度重くしたり、引いた時の動きが収まりやすくなるように、ボックスの中の空気をサスペンションとして使ったりする。このように振動板の重量とボックス内の空気、エッジやダンパーの硬さなどの微妙なバランスによって、スピーカーは成り立っているわけ。とくに小口径スピーカーよりは振動板が大きく重くなるサブウーファーは、慣性で振動板が止まりにくいので、ボックス内の空気のサスペンションが重要。推奨容量が定められているのは、このためだ。

ところが、ダイヤトーンSW-G50は、軽い振動系を超強力な電磁制動力で制御してしまおうという考え方。だから振動板の重量や、空気のサスペンションなどおかまいなし。ボックスの容量が小さすぎて、ボックス内の空気のサスペンションが効き過ぎない限り、ボックスの容量に関係無く、安定した性能を発揮する。フリーエアと言われる、スピーカーの背面にボックスが無く解放の状態でも大丈夫なのだ。ある意味、画期的なサブウーファーである。

このサブウーファーの音を、試聴室とデモカーで試聴した。両方とも、組み合わせたスピーカーはDS-G50。ただし、パワーアンプは違っていて、試聴室で聞いた時に使っていたのは、すでに販売が終了しているフォーカルのFPシリーズという6〜7万円台クラスのパワーアンプ。けっして制動力が高いアンプではないのだが、立ち上がりが速い低音に驚いた。音がビシッと立ってビシッと止まる感じ。余分な音がしないので、音楽が引き締まる。

デモカーのパワーアンプは確認し忘れたが、もう少し上級のアンプだと思われる。このデモカーも驚きの連続。フロントのDS-G50も、非常にレスポンスのいいスピーカーで、並みのサブウーファーなら、その速さに追いつかず、どうしても低音がもたついてしまうため、かえってサブウーファーが無いほうがいいのでは? というケースもあった。ところが、このSW-G50はフロントのDS-G50の速さにしっかりとついてくるので、つながりのいい一体感のある音がする。

しかも、低音の音階もはっきり。クルマの中ではどうしても低音の音程がぼやけてしまいがちだが、ピアノの最低音までこれほどはっきりと聞こえたクルマは、それほど例がない。とにかく、立ち上がりが鈍いサブウーファーは速くならないため、フロントスピーカーとのつながりに苦労するが、速いサブウーファーならどんなフロントスピーカーでも組み合わせやすいと思う。磁気回路が強力な故に、ダイレクター無しで12キログラムと重いのはたまにキズだが、このパフォーマンスでこの価格は安いと思う。

ダイヤトーン


いいね!