オーディソン「Prima」AP8.9bitを聴いた!

イタリアのオーディソンから登場した「Prima」AP8.9bit(100,000円/税別)はコンパクトなボディに8chアンプと9chデジタルプロセッサーを凝縮したアイテム。これを搭載したデモカーをインプレッション。


今、輸入車はかなりの確率で、大掛かりな施行をしないと市販ナビや市販オーディオを組み込むことができない。つまりオーディオのグレードアップはかなり難しい状況だ。その流れは国産車にも及んでいて、最近のクルマだとマツダ・アクセラがいい例。7型モニターとコマンダーコントロールで構成されたマツダコネクト搭載車は、インパネにDINサイズの市販オーディオを装着するスペースがなく、インテリアを見た瞬間に、オーディオグレードアップしようなんて気が失せる。さらにアップルがCarPlayを発表するなど、世の中、インパネのタブレット化が進みそうな気配。こうなると「カーオーディオをグレードアップするためにヘッドユニットを交換する」という行為自体、一部のマニアを除いて無くなるかもしれない。いや、実際にそうなりつつある。

じゃあ、純正オーディオの音が不満でも、我慢しなければならないのか。その答えのひとつが、オーディソンのAP8.9bitである。
オーディソンAP8.9bitは8chアンプと9chDSPを内蔵
 このAP8.9bitは純正ヘッドユニットからスピーカーに接続されているケーブルの間に割り込ませる形で接続する。つまり純正ヘッドユニットは、そのまま使える。その純正ヘッドユニットで再生した音楽信号を、AP8.9bitの中でデジタル信号に変換し、DSPでクルマに応じた補正を行ったあと、パワーアンプで増幅してスピーカーを駆動するというわけ。

内蔵アンプは8chあるから、例えばBMWのようにフロントスピーカーがドアミラー裏のトゥイーター+ドアのミッドレンジ+シート下のウーファーという3ウェイ構成でも、スピーカーユニット1個に付きアンプ1ch分を割り当てて駆動するマルチアンプ接続が可能だ。この場合、フロントスピーカーに6chのアンプを使い、残った2chでリアスピーカーを鳴らせる。
デジタル入力とサブウーファー出力を備える
また内蔵パワーアンプはブリッジ接続にも対応。リアスピーカーは鳴らさなくていいというなら、トゥイーター&ミッドレンジに4ch分のアンプを使い、残りの4chはブリッジ接続して2chアンプとし、左右のウーファーを鳴らすという使い方もできる。パワーアンプの定格出力は通常チャンネルあたり35Wだが、ブリッジ接続すれば130Wになるそうだ。

さまざまなシステム構成に応じた設定はあらかじめプリセット済み。8つの中から選んで設定しておけば、パソコンでの調整をせずにすむ。もちろんパソコンを使って、ここのクルマに合わせた綿密な調整も可能だ。

内蔵DSPはシーラスロジック製。32bit/147MHzの高性能なDSPを使用する。DSPで調整できるのは、クロスオーバー、イコライザー、タイムアライメント。クロスオーバーポイントは20Hz〜20kHzの範囲で68ステップの中から選べる。スロープは最大-24dB/octだが、肩特性をリンクウィッツとバターワースから選べる。イコライザーはパラメトリック式で10ポイントの設定が可能。タイムアライメントは距離でいうと2.8cm刻みで、最大510cmまで補正可能だ。

さて、デモカーの音。このプリウスはヘッドユニットをDIATONE SOUND.NAVIに変更してあり、AP8.9bitの使い方としてはある意味イレギュラーだが、ナビのスピーカー出力のクオリティが高いおかげもあってか、スピーカー出力をハイレベルで受けて再度増幅するシステムにありがちなS/Nの劣化はほとんど感じない。
デモカーのプリウスはDIATONE SOUND.NAVIを使用
スピーカーは、フロントがオーディソン「Voce」シリーズの16.5cmウーファーAV6.5(24,000円/税別)と28mmトゥイーターAV1.1(20,000円/税別)のセパレート2ウェイ構成。ラゲッジルームにはバスレフボックスに組み込んだ30cmウーファーAV12(50,000円/税別)を設置している。これらのスピーカーは、すべてAP8.9bitの内蔵アンプで駆動。フロントの左右のウーファーとサブウーファーは、アンプをブリッジ接続して駆動している。
AP8.9bitは幅198×奥行134×高さ45.5mmのコンパクトサイズ
 運転席で最適な音場再生ができるようセッティングした定位感や音場の広がりは、けっして純正システムで得られるものではないし、物腰の柔らかい耳あたりの良い音色は、ロングドライブでも心地よく音楽に浸っていられそう。これは想像だが、スピーカーが純正のままでも、AP8.9bitの内蔵アンプで鳴らすことによって、純正時よりはスピーカーの性能を引き出すことができ、サウンドクオリティは大きく向上するに違いない。純正デッキの入れ替えが簡単じゃない、もしくはオリジナルのインテリアが好きだから市販デッキを組み込むのはイヤという人が、オーディオのグレードアップを図るにはピッタリのアイテムといえるだろう。
フロントスピーカーはオーディソンVoceシリーズ

ラゲッジルームに30cmサブウーファーを設置
また、先ほどDIATONE SOUND.NAVIとAP8.9bitの組合せはイレギュラーと書いたが、音質調整機能が少ないスタンダードモデルで、もっときめ細かく調整したいと思った時には、この組合せはアリだと思う。サイバーナビや楽ナビ、彩速ナビなど、他のAVナビも同様。もっと細かく調整して音を良くしたいと思ったらデジタルプロセッサーの追加は大いにありで、そんなときオーディソンAP8.9bitは第一候補に挙げられる。

アルファ