昨年末にデリバリーが開始されたオーディソンの新しいミドルクラス・パワーアンプ、Voce(ヴォーチェ)シリーズ。この4チャンネルモデルを試聴しました。
Voceシリーズは、5チャンネルのAV5.1k(165,900円)、4チャンネルのAV quattoro(134,400円)、2チャンネルのAV due(115,500円)、モノラルのAV uno(147,000円)の4種類をラインナップ。試聴したAV quattoroは4Ωステレオ時で120W×4の出力を持ち、出力インピーダンスはステレオ/ブリッジ時ともに1〜4Ωまで対応します。
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試聴したのは4chアンプのAV quattoro |
このアンプ、まずルックスがいい。サイドのヒートシンクが、ボディ中心に向かって緩やかにえぐれているあたりは、上級機の
THシリーズとイメージが重なります。ボディサイズは、幅470×奥行220×高さ58mm。けっして小さいアンプではないのですが、きゅっと引き締まったボディはコンパクトに見えます。全体的に黒基調なのもいいですね。さすがデザインの国、イタリアのアンプです。
デザインだけではなく、中の回路にもTHシリーズのノウハウが活かされています。たとえばアンプのモニタリング機能。電圧や電流、出力インピーダンス、温度などをマイクロプロセッサーで常に監視していますし、電源部には電源電圧の変化に左右されず一定の出力を供給し、常に最良の状態に保つマイコンも搭載しています。このおかげで、出力インピーダンス1Ωまで対応しているのだと思います。
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電源とスピーカー端子が同じ面に。キャパシタ専用端子もある |
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入力部はモジュール式。下が標準のアナログモジュール、
上が別売のAV bit IN。標準モジュールはクロスオーバー
を内蔵。ハイレベルインプットも装備。プリアウト付き |
そして信号入力部。標準装備の入力部&クロスオーバー部はモジュール式になっていて、4本のネジを外せば簡単に取り外せます。ここに別売のAV bit IN(19,950円)というD/Aコンバーター搭載のデジタルインターフェイス・モジュールを差し込めば、デジタルプロセッサーの
Bit one(99,750円)や
Bit ten D(68,250円)からのデジタル信号を入力できるようになります。つまり、デジタル出力付のプレーヤーからBit oneやBit ten Dに音楽信号を送り込めば、プレーヤーからパワーアンプで増幅する直前まで、フルにデジタルのままで信号を伝送できるわけですね。考え方としては、カロッツェリアXのデジタルプロセッサー内蔵アンプ、
RS-A9Xを使ってシステムを構築したピュアデジタル・システムと同じ。パワーアンプまでデジタル信号で伝送することで、信号伝送中のノイズ混入や伝送ロスの無いクリーンな音が楽しめるわけです。
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AD LinkとAC Linkは専用のデジタル入出力&コントロール信号の入出力 |
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フルDAのイメージ |
いまどきデジタル出力付のソースユニットを探すほうが難しいと思う人もいると思いますが、iPodを使えば簡単。たとえばオーディオテクニカの
AT-DL3i(39,900円)があれば、iPodの音楽をデジタルで出力できますから、Bit ten D(デジタル入力は光のみ)にiPodのデジタル信号を送り込めます。またBit ten Dはハイレベル入力を装備していますから、純正システムの音も入力できます。だから、純正システムを残したまま、ラジオやCDの音も聴けますし、よりいい音で音楽を楽しみたいときはiPodで聴く。こんなシステムができるわけです。純正システムが外しにくくなっている昨今、わりと現実的なシステムかと思います。ちなみに、アンプ+プロセッサー+デジタルインターフェイスの合計が222,600円。AT-DL3iを加えて262,500円。スピーカーと取付工賃を加えて50〜60万円といったところでしょうか。同じフルデジタル伝送のシステムをカロッツェリアXで構築しようと思ったら、プロセッサー内蔵アンプだけで50万円超。デッキも必要ですから、トータルでは軽く倍以上かかります。オーディソンでシステムを組んでも、けっして安くはないですが、カロッツェリアXと比べると、断然リーズナブルにフルデジタル伝送のシステムが組めるわけです。
話は少しそれてしまいましたが、AV quattoroの音の印象を。ひと言でいうと、まったりした音という印象。優しく穏やかな鳴り方のアンプです。Voce(英語でVoice)という名前の通り、ヴォーカル帯域は、質感が高く雰囲気よく唄ってくれます。バラード系のヴォーカルものとか、弦楽四重奏など小編成のクラシックなど、スローなアコースティック系の音楽は、とても気持ちよく楽しめます。逆にドラムのアタック音などは、音の角が若干丸くなる感じがあるので、音の立ち上がりの速さが必要とされるエレクトロとか、ロック系は似合わない感じですが、聴きやすい音です。
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Bit ten D+AV bit INを加えてフルDAシステムが可能に |
いずれにせよ、10万円台前半のアンプとしては、とても魅力的。同価格帯のライバルとしてはカロッツェリアの
PRS-A900が挙げられますが、音の傾向は対極にありますので、キレのいい音が好みならカロッツェリアを、まったりとした心地よい雰囲気が好みならオーディソンを、という選択になるのではないでしょうか。ちなみに、AV bit IN+Bit ten Dを加えてフルデジタル伝送すると、音の立ち上がりがシャキッとする印象。この、フルデジタル伝送のシステムが組めることは、ライバルには無い大きな魅力です。
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アルファオーディオ