サブウーファーが車内での低音再生に効果があることはわかっていても、導入に踏み切れない理由で一番大きいのは「場所をとるから」だろう。確かに、従来のサブウーファーは、十分な低音を得ようとすると少なからず荷室容量を減らしていた。またシート下などにも設置可能な、コンパクトなサブウーファーだと音圧が物足りなくてレベルを上げると歪みがちというのもあった。
カロッツェリアTS-WH1000A(52,500円) |
この薄さは、独自に開発したHVT方式のおかげで実現したもの。HVT方式とは、リンク機構により、横に動くヴォイスコイルの動きを縦に替えて振動板を動かす仕組みだ。一般的なスピーカーはボイスコイルと振動板が同じ方向に動くから、どうしても振動板の深さ+ヴォイスコイルおよび磁気回路分の奥行が必要だが、平面の振動板の横にボイスコイルを置けるから、薄くできるわけだ。
このHVT方式のスピーカーは、すでにカロッツェリアのサテライトスピーカー等で採用されているが、サブウーファーのような振動板が大きいタイプは初めて。TS-WH1000Aの振動板は20cm×8cmの長方形で、これが2段に重なった両面駆動タイプとなっている。ヴォイスコイルも2個あり、振動板の左右両側から挟むようにピストン運動を行う。水平対抗エンジンを思い浮かべるとイメージできるかもしれない。
そして薄さを実現するためにリンク機構も工夫。X-ポジションリンクというリンクがクロスする新たな機構を開発し、極力高さを抑える努力をしている。これで、従来のスピーカーに換算すれば20cm相当の振動板面積を確保している。
実は、本来はもっと早く発売する予定で開発を進めていたが、この振動板の大きさゆえやや遅れて発売が今になったという。サテライトスピーカーに使っているサイズの振動板なら問題ないものの、振動板が大きく低音を再生するとなると、リンク機構などの可動部の負担が大きくなる。その耐久性を確保するために改良を重ねたのだ。そのおかげで、耐久性にはまったく問題なくなったとのことだ。
デモカーのイヴォークはラゲッジルーム右サイドに装着 |
以前、両面駆動のHVTユニットを複数搭載した無指向性スピーカーのデモ機を聴いたことがあるが、HVTユニットを搭載した板をクルクル回しても、聴こえる音はまったく変わらないのに驚いた経験がある。その時と同じような驚きが、このサブウーファーでも感じられる。
シート下に5cm程度の隙間があれば設置可能だ |
そんなサブウーファーだから、低音の音圧が欲しい人には向かないが、音楽の低域側の再生レンジを広げたい、低音の解像度を高めたい、レスポンスのいい低音が欲しいというなら、十分に満足できる音が得られると思う。せっかく高いユニットを使っても、エンクロージャー作りに失敗して、低音がつまった感じになってしまう例は多々あるが、TS-WH1000Aなら簡単にスムースな低音が手に入るのだ。
この薄さであれば、助手席足下のフロアマットに下に隠して設置してしまう手もあるだろうし、工夫次第でさまざまな設置方法が考えられる。で、低音の質感も良好。TS-V172Aのような中級スピーカーだけではなく、ハイエンドスピーカーにも合いそうだし、純正スピーカーにプラスしても、けっこうなサウンドのクオリティアップが図れそう。そんな幅広さを持っていそうな印象だ。
・カロッツェリアTS-WH1000A
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