アルパインの普及セパレート2ウェイ・スピーカー、STE-G170Sを聴いた

最近、安くてもけっこうまともな音がするスピーカーが増えている。「こんなの付けたら、普通の人は満足しちゃって、さらにグレードアップしたいなんて考えないんだろうな」とか「この値段で、はたして利益はでるのだろうか」と思ったりするわけだが、アルパインが2月に発売したSTE-G170S(15,750円)も、そんなスピーカーだ。
なにしろ15,000円(税別)なのにセパレート2ウェイ。カロッツェリアにもやはり税別で15,000円のTS-F1720Sというセパレート2ウェイスピーカーがあるが、一般的にはウーファーの真ん中にトゥイーターがくっついたコアキシャルスピーカーの価格ゾーンだ。なのにセパレート2ウェイ。トゥイーターがウーファーから切り離されたセパレート2ウェイタイプは、トゥイーターの設置の自由度が高い点で有利。とくにフロント用にはセパレートタイプのメリットが大きい。それが、普及価格のコアキシャルタイプに近い予算で手に入るのだ。
セパレート2ウェイなのに15,750円
それでも「安かろう、悪かろう」では意味がない。この価格帯のスピーカーには、まだまだハデな音創りのものも多く、一瞬聴いただけだと、シャキっとしていて良く感じるのだけれど、長く聴いているうちにそれが耳障りに感じて、ついボリュームを下げたくなるものも多いからだ。

トゥイーターは3cmバランスドーム型
ただしSTE-G170Sに関して、その心配は不要。低域から高域までバランスの整った音だ。いつの間にか、アルパインは「ベスト・ヴォーカル・スピーカー」をキャッチフレーズにしているが、ヴォーカル帯域が薄くならず、歌が明瞭に聴こえてくるあたりは、そのキャッチフレーズに恥じない音創り。これは想像だが、おそらくP.E.Iバランスドーム・トゥイーターの口径を3cmと大型化し、トゥイーターでわりと低い周波数まで再生しているのだと思う。そのおかげで、ウーファーとの音のつながりが良くなり、ヴォーカル帯域も痩せないのではないだろうか。

付属ネットワーク
低音のエネルギー感と躍動感も魅力的だ。このあたりの再現力は、アルパインの上位スピーカーも得意とするところだが、普及価格のモデルにまで、しっかりと受け継がれているのがうれしい。まあ、このあたりはスピーカーだけの力ではなく、デモカーに搭載されていたプリウスα専用のカーナビ「ビッグX」VIE-X008EX-PRAのオーディオ回路全般の能力の高さによるところも大きいと思われるが、低音の押し出し感と解像度は、内蔵アンプで鳴らしているとは思えないレベル。最近「音が良いカーナビ」というとダイヤトーン・サウンド・ナビがすぐに頭に浮かぶが、アルパインのビッグXも侮れない存在だ。

話をスピーカーに戻そう。もちろん、上位モデルと比べてしまうと、解像度をはじめかなわない部分はある。が、バランスが整っているおかげで、とくに不満は感じない。ジャンルを問わず、それ相応に十分に聴ける音を発してくれる。試聴会を開くと、試聴に訪れるお客の中にはたまにクラシックやオペラなんかを聴きたがる人もいるそうで、試しに女声のオペラを聴いてみたが、安いスピーカーだととても聴いていられないほどヒステリックな声になりがちなハイトーンのソプラノも、破綻なく再生してくれる。それでいて、デジタルベースがバシバシのハウス系音楽も迫力たっぷりに楽しめる。15,000円でこれだから、驚きである。
トゥイーターは専用取付けキットを使って装着
もちろん、15,000円で済むわけではなく、デモカーはトゥイーターをプリウスα専用取付けキット・KTX-Y40PRA(2,940円)で組み込んでいるし、ウーファーは6×9インチ楕円の純正スピーカーのクルマに17cmスピーカーを装着できるインナーバッフルボード・KTX-Y691HB(8,400円)を使ってインストールしている。もちろん、取付工賃も発生する。お店によって工賃は異なるから一概にはいえないが、最低でもスピーカー代+2〜3万円、もしくはそれ以上かかると思う。が、それだけかかったとしても、音楽好きであれば、高い満足度が得られると思う。純正とはまったく異なる、音楽が生き生きと鳴る空間が手に入るのだから。

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