DIATONE SOUND.NAVI MZ90シリーズを聴いた!

MZ60シリーズからMZ80シリーズへのモデルチェンジでは、内蔵DSPが40bit演算精度のものから64bit演算タイプに変わるという、わかりやすいデバイスの変更があった。DSPの処理能力を大幅に向上したことで、FIRの処理が可能になり、カーオーディオでは不可欠なイコライザー等のデジタル調整を施したあとも、調整機能を使わないダイレクトな音との差異をほとんど感じさせない高音質を実感できた。カーオーディオにとっては大きな恩恵である。


それに比べて、MZ80からMZ90への進化は、地味な感じがする。もちろんマスタークロックの周辺回路を見直してクロックの精度向上をはかったり、パーツの見直しや回路パターンの改善を施すなど、こまごまとした改良は行っているし、電源回路はICの組合せからディスクリートに替えている。しかし、MZ80とMZ90の基板を見比べてみても、素人目には違いがわからない改良だ。
DIATONE SOUND.NAVIは従来同様PREMI(左)とスタンダードモデルの2機種
目に見える変更といえば、付属の電源&スピーカーハーネスを7Nの高純度銅に変更したこと。7Nとは限りなく純銅に近い99.99999%の純度を持つ銅のことで、9(Nine)が7個並ぶことから7Nというわけだが、それにしても付属ハーネスの長さはスピーカーで10センチ程度。そこから先はケーブルを引き直した場合でも違う素材のケーブルを使うわけだし、下手したらクルマの純正ハーネスを使うケースもあるわけで、その効果には多少の疑問はあった。
電源&スピーカー線に高純度銅7Nを採用したハーネスを付属
ところがである。音を聴き比べて驚いた。まず始めにMZ80に付属のハーネスを繋いだ時の音と、MZ80のハーネスを7Nケーブルに替えた時の音を聴き比べたわけだが、解像度がまるっきり違う。最初に聴いたのは、聴き慣れたイーグルス「ホテル・カリフォルニア」のライヴだが、ハーネスを7Nケーブルに替えたとたん、出だしの拍手の数が一気に増える。ノーマルハーネスでは、大きな音に埋もれて聴こえなかった小さな音の拍手も、ハッキリと聴き取れるようになったのだ。

拍手からしてそうだから、楽器の音やヴォーカルの声も細かい部分まではっきり聴こえてくるようになる。ギターの弦がこすれる音、ヴォーカルの微妙なヴィブラート、管楽器のブレスの息づかい、ピアノのペダルの音…etc。細かい音まで聴こえてくるから、臨場感がグッと増すのだ。また、ナビ本体の音量をまったく変えていないのに、なぜか音が大きく聴こえるように感じる効果もあった。

高純度銅7Nケーブルの効果がわかったところで、いよいよナビ本体をMZ90に替える。まず気づいたのは、CDを入れた時に、自動でディスプレイが閉じるようになったこと。MZ80まではCDを入れたあとにディスプレイを閉じるボタンを押さないと閉じてくれなかったので、使い勝手の面では大きな進化である。
アルファロメオ・ジュリエッタのデモカーでも試聴
そして試聴。MZ80+7Nケーブルでも解像度の大幅向上が確認できたが、ナビ本体をMZ90に替えることで、さらに解像度は2段階くらい向上した。先ほどの「ホテル・カリフォルニア」の拍手はステージから離れた場所からかすかに聴こえる拍手まで聴き取れるようになる。だから、左右、高さ方向に加えて、奥行き方向の音場の広がりが一気に増してくる。

もちろん、楽器の音や歌声も、さらに細かいニュアンスまで伝わってくるようになり、臨場感どころか生々しさも感じられるようになる。しかも、音ひとつひとつの力強さも増すものだから、音に血が通うというか、熱気さえも感じられるようになる。だから、音楽が楽しい。MZ60からMZ80へのモデルチェンジでも、車内試聴時の音質向上のインパクトは大きかったが、今回のMZ80からMZ90への進化は、それ以上のインパクト。DSPを通さないいわば素の音が大幅に向上したのだ。
PREMIモデルには3Way/Lというモードを追加。車載での調整に効果絶大
MZ90が目ざしたのは、聴感上の高S/N感。それはMZ60やMZ80から一貫して追求してきたテーマだが「まだS/N感を引き出しきれていないんじゃないか」と感じて取り組んだのが、7Nの高純度銅ケーブルの採用であり、電源回路のディスクリート化であり、さまざまなパーツの見直しやマスタークロック周辺の回路構成の変更である。細かいところでは、シャーシを取付けるネジのトルクや締める順番までこだわったというから恐れ入る。したがって、うっかりシャーシを開けようものなら、再度締め付けたあと、音が変わってしまったということにもなりかねないので注意。そこまで、なるべく信号にストレスがかからずスムースに流れるように気を使ったのだ。

周囲に灯りがない真っ暗な山中で夜空を眺めたとき「うわっ、星ってこんなにあったのか」と驚いた経験を持つ人は多いと思う。周囲が明るい街中では、その光に邪魔されて見えなかった弱々しい光の星までがくっきりと見えてくるからだ。今回のMZ80からMZ90への進化は、それに近い感覚。耳に聴こえるわけではないけれども、音楽信号に含まれる微細なノイズを極限まで取り除くことで、それまでノイズに埋もれて聴こえなかった細かい音までが聴こえてくるようになるし、音場空間そのものの静けさが高まる。そのため、楽器等、ひとつひとつの音そのものも際立ってくる。

そんな大げさな、と思うなら、ぜひ実際に試聴してみるといい。毎週末、全国各地の量販店やカーディーラーの数カ所で試聴会を行っているので、近くの試聴会場へ足を運んでみることをおすすめしたい。

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